- 1999年に相次いだ医療事故の報道をきっかけに、医療安全対策が国をあげて推進されるようになる
米国で「To err is human, 人は誰でも間違える」という報告書が発表された
アメリカだけで年間4.4万~9.8万人が医療ミスによる死亡をしていると報告 - 2001年厚生労働省に医療安全推進室が設置、医療安全対策検討会議の発足
- 2002年医療安全推進総合対策の策定
- 2003年医療法により医療安全支援センターの設置
- 2006年医療法の改正により、安全管理体制の確保が制定され医療機関に医療安全管理、感染管理、医薬品安全管理、医療機器安全管理の責任者をそれぞれ配置することが制定
- 2014年医療法改正により医療事故調査制度がはじまる
- 2015年医療事故調査・支援センターが発足
- 2019年WHO総会で9月17日が世界患者安全の日と制定され、日本でも医療安全推進週間と共に医療安全文化の醸成を図るようになった
- 2020年医療安全対策地域連携加算が新設され、特定機能病院以外の医療機関間で連携して医療安全対策に関する評価を実施することを評価することとなる
医療安全のはじまり
戦後の医療体制と医療事故
戦後の日本では、ベッドに寝たままの患者が一人で大勢の医師や看護師に囲まれ、診察を受けるような光景が一般的になりました。
医師が中心となって患者の治療を行う「医師中心の医療」を特徴とした医療体制だったからです。
しかし、この体制下では、時に薬の誤投与や手術ミスなど重大な医療事故が発生することもありました。
1999年に相次いだ医療事故
日本では、1999年(平成11年)に2つの重大な医療事故が発生し、医療安全への社会的関心が高まりました。
- 1月11日横浜市立大学病院の事故:肺手術と心臓手術の患者を取り違えて手術。→医療安全についての社会的関心が高まる
- 2月11日都立広尾病院の事故:看護師が消毒液とヘパリン加生理食塩水を取り違えて静脈内に投与し、患者が死亡。→医療事故の警察への届出が増加する
平成11年に起きた11日の2つの医療事故。
それまで医療事故はあってはならないものとされていました。
この事故をうけて2000年以降は医療事故は起こりうることに変化します。
医療安全への認識の変遷
医療事故は「個々の医療従事者のミス」と捉えるのではなく、「医療体制全体の問題」と捉えるようになっていきます。
例えば薬の誤投与があった場合、それはその薬を投与した看護師だけの問題ではありません。
薬の保管方法、投与の手順、確認の仕組みなど、医療体制全体を見直すことで、同じ事故を防ぐことができます。
医療事故が発生した際には、その原因を徹底的に追求し、再発防止に努めることが求められるようになりました。
また、患者本人やその家族に対する説明責任も重要視されるようになりました。
このように、医療安全への認識は時間と共に変わりつつあります。
それは医療の質を向上させ、患者にとってより良い医療環境を提供するための重要なステップなのです。
医療安全の取り組みの始まり
医療事故情報の公開化と医療事故への対応と改善のための制度構築は、医療安全を保つための大切なステップとなります。
これらの取り組みによって、医療はより安全にそして患者にとってより信頼できるものになっていきます。
医療事故情報の公開化
医療事故が起きたとき、その情報をみんなに公開することで、他の医療機関や医療従事者が同じような事故を防ぐことができます。
また、患者やその家族に対しても、何が起きたのかをきちんと説明することが大切です。
これによって、患者と医療従事者の間の信頼関係を保つことができます。
医療事故への対応と改善のための制度構築
「制度構築」とは、ある目標を達成するために必要なルールや仕組みを作ることです。
医療事故が起きたとき、どのように対処し、どのように改善するかを決めるルールや仕組みを作ることが重要です。
例えば、医療事故が起きたとき、その原因を調査し、同じ事故が再び起きないようにするための改善策を考える。
そして、その改善策を実行するための計画を立て実行する。
これらすべてのプロセスには、きちんとしたルールや仕組みが必要となります。
医療の安全の確保
医療法
医療法とは、1948年に作られた、病院や診療所などで医療を提供するためのルールを決める法律です。
この法律は、医者がどのように働くべきか、病院や診療所はどのように運営されるべきかを明確にしています。
この法律の目的は、医療を受ける人々のために、良い質の医療を効率的に提供するシステムを作ることです。
これによって、全ての人々が健康でいられるように助けることが目指されています。
つまり、この法律は患者さんの健康を守るための大切なルールを決めているのです。
もし事故が起きたときには、その原因をきちんと調べて、同じ事故が再び起こらないように改善することが求められるようになりました。
医療安全支援センターの設立と活動
医療法により各都道府県や保健所を設置する市および特別区に設置されています。
- 医療に関する患者・住民の苦情・心配や相談にの対応。
- 医療提供施設、患者・住民に対する医療安全に関する助言及び情報提供。
- 医療機関の管理者、従業者に対する医療安全に関する研修の実施。
デジタルヘルスと医療安全
デジタルヘルスとは、コンピューターやインターネットのような新しい技術を使って医療をより良くしようとする取り組みのことです。
これには、人工知能やウェアラブルデバイス(身につけられる小さなコンピューター)、大量の情報(ビッグデータ)を解析することなどが含まれます。
デジタルヘルスは、私たちが健康を守るのに大きな役割を果たします。
たとえば、自宅で体調をチェックする装置を使ってできることは、リハビリ支援や病気の早期発見・管理です。
データ収集や分析など診断や治療支援、記録補助など医療従事者の作業効率化や制度の向上に貢献してくれます。
また、インターネットを使って医師と話す(オンライン診療)ことで、移動することなく医療を受けることができるため感染リスクの減少や時間の効率化が可能です。
このように、デジタルヘルスは医療をより良くするための強力なツールですが、それを上手に使うためには注意と学習が必要です。
- デジタルヘルスは大量かつ複雑なデータ、特に個人情報や医療情報を扱うため、セキュリティとプライバシーの保護が不可欠
- 新しい技術やサービスを導入する際には、有効性や安全性についてのエビデンスを構築し評価することが必要
- デジタルヘルスの進展に対して、法律や規制といった制度の整備や更新が追いついていない状況
- デジタルヘルスの利用者である医療従事者や患者、消費者などの意識や教育が不十分な場合がある
結論
過去に起きた出来事は変えることはできません。
しかし、知ることができ対策を考えられます。
未来のことは予測することが困難であり、医療安全においては結果が明確に現れにくいものです。
たまたま、何も発生しなかった日常が繰り返される中で、いつか突然事故が起こってしまいます。
医療行為の中で確認をする作業とルールを守る手間は、成果を実感しずらいだけであって目に見えない形でも多くの人々の未来を守る役割を果たしています。
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