【医療ニュース解説】「患者が映ってないから平気」はなぜNG?手術室の無断YouTube配信から学ぶSNSの落とし穴

医療現場におけるSNSの使い方が問われるニュースが話題になりました。

熊本県にある熊本総合病院で、医療機器のスペシャリストである「臨床工学技士」の男性職員が、手術室の装置などを無断で撮影し、自身のYouTubeチャンネルに投稿したとして懲戒処分を受けました。

この職員は「臨床工学技士という仕事の認知度を高めたかった」「動画に患者さんは映っていないから大丈夫だと思った」と話しているそうです。仕事への熱意があったとはいえ、「患者さんが映っていなければセーフ」という認識は、命を預かる医療現場において非常に危険な考え方です。

病院の内部、とくに手術室という厳重に管理された場所では、たとえ人が映っていなくても、絶対に守らなければならないルールと倫理があります。

この記事では、一般の方や医療系を目指す高校生、そして現役の医療従事者に向けて、「なぜ手術室の無断撮影がこれほど重大な問題になるのか?」を分かりやすく解説します。また、ネットの炎上リスクを防ぎつつ、医療職の魅力を正しく発信するにはどうすればいいのか、そのヒントも一緒に探っていきましょう。

音声のみはこちら↓

目次

【ニュースの概要】熊本総合病院で何が起きたのか?

手術室での無断撮影と、その後の厳しい処分

撮影されたのは「手術室内の装置」

2026年2月、熊本県八代市にある熊本総合病院で働く50代の男性職員(臨床工学技士)が、病院の許可なく手術室の内部をスマートフォンで撮影するという出来事がありました。動画そのものに患者さんの姿は映っていませんでしたが、手術で使われる重要な「医療装置」などが撮影対象となっていました。

勤務時間中のYouTube投稿

さらに問題視されたのは、この撮影が「勤務時間中」に行われ、その動画が本人の個人のYouTubeチャンネルに投稿・配信されていたという点です。本来、患者さんの命を守るために集中すべき時間に、私的なSNS更新のための撮影を行っていたことになります。

病院が下した「減給1か月」の懲戒処分

この事態を重く見た病院側は、2026年2月17日付でこの職員に対して「減給1か月」の懲戒処分を下しました。いくら患者さんが映っていなかったとしても、医療現場の厳格なルールを破る行為に対し、厳正な対応が取られた形です。

外部からの指摘で発覚、病院の対応は?

情報提供によって発覚した事実

実は、この無断撮影は病院側の内部チェックで気づいたわけではありませんでした。病院の運営者に対して「こんな動画がYouTubeに上がっている」という外部からの情報提供があったことで、初めて事態が発覚しました。ネット上に一度公開された動画は、いつ誰の目にとまるか分からないという、SNS特有の怖さが表れています。

病院が掲げた再発防止策

熊本総合病院は、今回の件を受けて「研修を強化して再発防止に努める」とコメントを発表しました。職員一人ひとりに対するSNS運用や情報管理の教育を改めて徹底し、二度と同じようなルール違反が起きない環境づくりを進めるとしています。

なぜ投稿したのか?本人の動機と後悔

「臨床工学技士の仕事を知ってほしかった」

病院の聞き取り調査に対し、男性職員は「臨床工学技士の認知度を高めたかった」と話しています。臨床工学技士は、高度な医療機器を扱う現場に欠かせないスペシャリストですが、医師や看護師に比べると一般の方にはまだ馴染みが薄い職業かもしれません。「自分の仕事をもっと多くの人に知ってほしい」という情熱や誇り自体は、確かにあったのでしょう。

「患者が映っていなければ…」という認識の甘さ

しかし、本人は同時に「認識が甘かった」と深く反省しているそうです。「患者さんさえ直接映っていなければ、手術室の機材を撮影してネットに出しても問題ないだろう」という思い込みが、今回の大きな失敗を招いてしまいました。この「認識の甘さ」がなぜ危険なのかは、医療従事者だけでなく、スマートフォンを持つすべての人にとって重要な教訓となります。

職種なのか)

今回のニュースで処分を受けた職員の職種は「臨床工学技士」です。「お医者さんや看護師さんは知っているけれど、臨床工学技士ってどんな仕事?」と疑問に思う方も多いかもしれません。ここでは、彼らが医療現場、特に手術室でどのような重要な役割を担っているのかを解説します。

臨床工学技士の役割(医療機器の専門職)

臨床工学技士(Clinical Engineer:CE)は、医学と工学の両方の知識を持つ、国家資格を持った医療機器のスペシャリストです。病院内にあるたくさんの機械が安全に動くように管理するのが彼らの使命です。

手術室で扱う可能性が高い機器の例(一般論)

現代の医療、特に大きな手術は、高度な医療機器なしでは成り立ちません。臨床工学技士は手術室に入り、以下のような生命に関わる重要な機器の操作や監視を行います。

  • 人工心肺装置: 心臓の手術中などに、患者さんの心臓と肺の代わりを果たして血液を循環させる装置。
  • 麻酔器・人工呼吸器: 手術中の患者さんの呼吸を管理する装置。
  • その他モニター類: 患者さんの血圧や心拍などをリアルタイムで監視する画面。

このように、患者さんの「命綱」とも言える機械を直接コントロールするため、手術室という極めて緊張感の高い空間で働く必要があるのです。

医療現場の“信頼”と専門職の発信

臨床工学技士は医療チームに欠かせない存在ですが、患者さんと直接お話しする機会は医師や看護師に比べて少ないため、「もっとこの仕事を知ってほしい」と考える人は少なくありません。

広報・啓発の重要性と、手段を誤ったときの反動

「臨床工学技士の認知度を高めたい」という今回の職員の動機そのものは、決して悪いことではありません。専門職の魅力を発信し、将来の担い手(高校生や学生さんなど)を増やすことは医療界全体の課題でもあります。 しかし、だからこそ「発信の手段」を間違えてはいけません。ルールを破って無断撮影した動画で注目を集めても、仕事への理解は深まらず、逆に「この病院、この職種は情報管理がずさんなのでは?」という不信感を世間に与えてしまうという大きな反動を生んでしまいます。


「患者が映っていない」でも問題になり得る理由

ニュースを見た方の中には、「患者さんが映っていないなら、ただの機械の紹介動画だし、別にいいのでは?」と思った方もいるかもしれません。しかし、医療の世界ではこの考え方は通用しません。なぜNGなのか、3つの視点から紐解いていきます。

院内は管理区域であり、撮影には許可が必要

大前提として、病院は公園や路上のような公共の場所ではありません。患者さんのプライバシーと安全を守るために厳重に管理された「管理区域」です。

病院の撮影・録音ルール(多くの医療機関で原則禁止)

多くの病院では、入り口や待合室に「院内での無断撮影・録音禁止」というポスターが貼られています。これは患者さんや面会者だけでなく、当然ながら職員にも適用されます。「自分の職場だから」と個人的な目的で勝手に撮影することは、組織の運用ルールに対する重大な違反行為となります。

個人情報・機微情報の“推測リスク”

「人が映っていない=個人情報が漏れない」というのは大きな誤解です。現代のカメラは非常に高性能であり、映像の隅々に写り込んだ小さな情報から、重大な個人情報(病歴などの機微情報)が推測されてしまうリスクがあります。

患者が映らなくても起こり得ること(例:氏名ラベル、画面表示、手術予定、端末通知)

例えば、以下のようなものが動画の背景にチラッと映り込むだけで、誰がどんな手術を受けているかが特定される可能性があります。

  • 医療機器のモニターに表示された「患者さんの名前、年齢、心拍数などのデータ」
  • 点滴や薬剤に貼付された「バーコードや氏名ラベル」
  • ホワイトボードに書かれた「本日の手術予定表」
  • 撮影に使ったスマホにたまたま表示された「他のスタッフからの業務連絡の通知」

施設情報・セキュリティ(装置配置、導線、IDカード等)の露出

患者さんの情報だけでなく、病院のセキュリティ上の問題も発生します。「高価な医療機器がどこに置かれているか」「手術室のパスワード入力式のドアはどう開けるか」「スタッフのネームタグはどんなデザインか」といった情報がネットに出回ると、悪意のある外部からの侵入や窃盗、なりすまし等の犯罪に悪用される危険性があるのです。

同意(インフォームド・コンセント)と承認フローの欠落

医療において最も重要視されるプロセスの一つが「同意」と「正しい手続き(承認フロー)」です。

患者同意の有無だけでなく「病院の承認」「目的外利用」の論点

もし仮に、「患者さんが完全に特定できない動画」であったとしても、それを個人のYouTubeにアップするには、病院側(院長や広報・情報管理の責任者)の正式な承認が必要です。 また、手術室の機材は「患者さんの治療」という目的のために設置されているものです。それを個人的な動画配信という「目的外」に利用することは、医療従事者としての倫理観や、病院と患者さんとの間の信頼関係を根本から崩してしまう行為だと言えます。

法令・ガイドライン・規範で見る論点整理(ブログの芯)

今回の無断撮影は、「病院のルールを破って怒られた」という単純な話では終わりません。国の法律や、医療従事者が守るべき倫理のガイドラインに照らし合わせると、非常に根深い問題を含んでいます。ここでは3つの重要な視点から整理してみましょう。

個人情報保護(医療・介護分野ガイダンス等の考え方)

医療機関で扱う患者さんの情報は、個人情報の中でも特に慎重な取り扱いが求められる「要配慮個人情報」にあたります。個人情報保護委員会(国の機関)のガイドラインでも、極めて厳格な管理が求められています。

個人情報に該当する可能性/匿名でも“再識別”される可能性

「患者さんの顔や名前を隠せば、誰だか分からない(匿名化された)から大丈夫だろう」と考えるのは非常に危険です。 例えば、「〇月〇日の〇時から」「この機械を使って」「この病院で手術をした」という複数の断片的な情報が組み合わさることで、「あ、これはあの人のことだ」と特定されてしまうことがあります。これを「再識別」と呼びます。顔が映っていなくても、動画の背景や撮影日時などから再識別されるリスクがある以上、それは厳重に守るべき個人情報なのです。

医療情報・情報セキュリティ(安全管理ガイドラインの観点)

厚生労働省が定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の観点からも、個人のスマホを業務エリアで使うことには大きなリスクが伴います。問題は「YouTubeに投稿したこと」だけではありません。

撮影データの管理(端末、クラウド同期、バックアップ、共有範囲)

私たちが普段使っているスマートフォンは、写真を撮った瞬間、自動的にGoogleフォトやiCloudなどの「クラウドサービス」にデータをバックアップ(同期)する設定になっていることがほとんどです。 つまり、手術室でシャッターを切った時点で、病院の外部にある企業のサーバーに、機密性の高い医療データが勝手に送信されてしまうのです。これは病院側からすれば、情報漏洩(セキュリティ事故)そのものです。

専門職倫理・SNS利用(団体声明の観点)

世界医師会(WMA)などの声明でも、医療従事者のSNS利用については厳格な倫理基準が設けられています。医療職は、社会から高い信頼を得ているからこそ、その行動には責任が伴います。

公益目的の発信と「職場の信用」「患者の尊厳」のバランス

今回の職員は「仕事の認知度を高めたかった」という、ある意味で公益的な(社会の役に立ちたいという)目的を持っていました。しかし、いくら目的が立派でも、手段を間違えて「患者さんのプライバシーの権利(尊厳)」を脅かしたり、「病院のセキュリティ管理(職場の信用)」を傷つけたりしてはいけません。医療従事者の情報発信は、つねにこのバランスを保つ必要があり、迷ったときは必ず「患者さんの保護」を最優先にするのが絶対のルールです。


なぜ「YouTube投稿」が特にリスクを増幅させるのか

手術室の写真を友達に直接見せるのも当然NGですが、それを「YouTube」というプラットフォームに投稿したことで、事態はさらに深刻化しました。インターネット、特に動画共有サイトならではの恐ろしさを見ていきましょう。

拡散性・保存性・二次利用(切り抜き・転載は禁止転載)

インターネットの最大の武器は「情報があっという間に広まること」ですが、それは同時に最大の脅威にもなります。

削除しても残る可能性(ミラー、アーカイブ)

「ヤバいと思ってすぐに動画を消したからセーフ」……ネットの世界では、これは通用しません。一度公開された動画は、誰かがこっそりダウンロードしていたり、別のサイトにコピー(ミラーリング)して転載したり、面白おかしく「切り抜き動画」に加工されたりする可能性があります。 これを「デジタルタトゥー(電子の刺青)」と呼びます。一度ネットの海に放たれた情報は、完全に消し去ることはほぼ不可能なのです。

プラットフォーム上の対応(通報・プライバシー申し立て)

万が一、今回のような不適切な動画が公開されてしまった場合、病院側は事態の収拾に追われることになります。

病院側が取れる手段の整理(一般論)

YouTubeには「プライバシー侵害の申し立て」という窓口があり、個人情報が晒された場合は運営に削除を依頼することができます。しかし、病院側は「どの動画で、何分何秒のところに、どんな機密情報が映っているか」を細かく確認し、法的な根拠をもとに手続きをしなければなりません。 本来、患者さんの命を救うために使うべき病院の貴重な時間と労力が、たった一人の職員のSNSの尻拭いのために奪われてしまうのです。これも、無断投稿が引き起こす大きな実害の一つです。

病院・現場が取るべき再発防止策(実務目線)

今回の事件を受けて、熊本総合病院は「研修を強化して再発防止に努める」としています。では、具体的にどのような対策をとれば、二度と同じような事故を防げるのでしょうか。単なる「注意喚起」で終わらせないための、実務的な3つのステップを見ていきましょう。

ルール整備(撮影・録音・SNS・持ち込み端末)

まず基本となるのが、誰もが迷わない明確なルールの作成です。「なんとなくダメ」ではなく、ハッキリと文書化して全員で共有することが第一歩です。

許可制の明文化(誰が承認し、何を確認するか)

学会発表などで、どうしても院内の撮影が必要になるケースもあります。その場合「個人の判断」ではなく、「どの部署の誰に申請し、どういう基準を満たせば許可が下りるのか」という手続き(承認フロー)をルールとして明記しておく必要があります。

撮影可能エリア/禁止エリアのゾーニング

「休憩室はスマホの使用OK」「病棟の廊下は持ち込みOKだが撮影NG」「手術室は持ち込み自体がNG」といったように、場所ごとにルールを分ける(ゾーニングする)のも効果的です。どこからが危険なエリアなのかを視覚的にわかりやすくすることが大切です。

教育・研修(“なぜダメか”を腹落ちさせる)

ルールを作っただけでは、現場には浸透しません。職員一人ひとりが「なぜそのルールが必要なのか、破るとどんな恐ろしいことになるのか」を心から理解する(腹落ちする)ための教育が不可欠です。

具体例ベースの研修(ラベル、モニタ表示、端末通知、背景の掲示物)

「スマホ撮影禁止」と伝えるだけでは、「患者さんが映っていなければいいだろう」という今回の職員と同じ勘違いが生まれます。「点滴のラベルが読めてしまう」「モニターの端の数字で状態が推測できる」「背景のホワイトボードで手術予定がバレる」など、実際に起こり得るリアルな失敗例を用いた研修を行うことが重要です。

技術的対策(必要に応じて)

人間の意識やルールだけではどうしてもヒューマンエラー(ミス)が起きてしまう場合、システムやテクノロジーの力を使って強制的に防ぐアプローチも検討されます。

持ち込み端末ポリシー(MAM/MDM、カメラ制御、持ち込み申請)

例えば、病院が支給する業務用のスマホには、特定のエリアに入ると自動でカメラ機能が起動しなくなるシステム(MDM:モバイルデバイス管理機能など)を入れる技術があります。また、個人のスマホを特定のエリアに持ち込む際は、専用の袋に入れたり、事前の持ち込み申請を必須にしたりする物理的な対策も考えられます。

監査・ログ・チェックの仕組み(運用負荷とのトレードオフ)

ネット上を定期的にパトロールしたり、誰がいつ院内ネットワークに接続したかの記録(ログ)をチェックする仕組みです。ただし、ガチガチに管理しすぎると、本来の医療業務の負担(運用負荷)が大きくなってしまうため、厳しさと働きやすさのバランスを取る必要があります。


医療者が情報発信をするなら(代替案・建設的提案)

ここまで「やってはいけないこと」や「リスク」ばかりを説明してきましたが、医療従事者が「自分の仕事の魅力を世の中に伝えたい」と考えること自体は、とても素晴らしいことです。では、どうすれば安全に、かつ効果的に職種の認知度を上げることができるのでしょうか。

安全に発信する方法(個人ではなく組織で)

最も確実で安全なのは、個人の思いつきのゲリラ撮影ではなく、病院という「組織」の公式なプロジェクトとして発信することです。

広報・教育コンテンツの作り方(院内承認、台本、撮影場所、写り込み対策)

病院の広報担当者や上司としっかり協力し、まずは「どんな動画を作るか」の企画書や台本を作って正式な承認を得ます。撮影場所も、実際の患者さんがいる稼働中の手術室は避け、誰もいない時間帯を使ったり、背景に不要な情報(ポスターや書類など)が一切ないよう、徹底的に環境を整えてからカメラを回します。

チェックリスト(投稿前の最終確認)

もし組織として公式動画や写真を公開する場合でも、SNSやYouTubeの「投稿(公開)ボタン」を押す前の最終チェックが命綱になります。

撮影許可・同意・匿名化・背景情報・端末管理・公開範囲

「責任者の撮影許可はとったか」「関係者の同意はあるか」「患者さんにつながる情報は100%排除(匿名化)できているか」「背景に機密情報はないか」など、複数人の目で指差し確認できる【投稿前チェックリスト】を運用することで、うっかりミスによる炎上を未然に防ぎます。

職種の認知度向上は「やり方次第で実現できる」

「臨床工学技士という仕事を知ってほしい」という熱い思いは、正しい手続きを踏めば必ず社会に届きます。

院内見学動画/機器の一般解説/シミュレーション環境での撮影 等(一般論)

例えば、高校生向けに「臨床工学技士の1日ルーティン」という公式動画を企画したり、実際の患者さんがいない訓練用(シミュレーション)のダミー人形を使って、医療機器の凄さや役割を解説する動画を作ったりすることができます。安全な環境さえ整えれば、個人情報のリスクをゼロにしながら、職種の魅力を120%伝える魅力的な発信は十分に可能なのです。

まとめ

今回の熊本総合病院での一件は、決して「一人の職員の不注意」だけで片付けてよい問題ではありません。スマートフォンとSNSが当たり前になった今、誰にでも起こり得る落とし穴だからです。最後に、この記事でお伝えしたかった重要なメッセージを振り返ります。

今回のニュースから学ぶべき3つのポイント

これから医療の世界を目指す高校生も、すでに現場の最前線で働いているプロフェッショナルも、以下の3つのポイントをぜひ心に留めておいてください。

「患者が映らない=安全」ではない

映像の端に映り込んだモニターの数値、点滴のラベル、背景の予定表などから、個人情報や病院の機密情報は簡単に推測されてしまいます。ネット上に一度拡散されたデータは二度と完全に消すことができません。「直接人が映っていなければ大丈夫」という甘い認識は、今日から完全に捨てましょう。

医療現場の信頼は“手続き”で守られる

病院は、患者さんの命とプライバシーを預かる極めて特殊で神聖な空間です。だからこそ、撮影の許可や事前の確認といった「正しい手続き(ルール)」が存在します。個人の勝手な判断によるルールの逸脱は、医療従事者が築き上げてきた患者さんとの信頼関係を根底から壊してしまう危険性があります。

発信は価値があるが、組織ルールと倫理の上で行う

「自分の職業(臨床工学技士)の魅力を社会に知ってほしい」という情熱自体は、医療の未来にとって非常に価値のあるものです。その熱意を無駄にしないためにも、個人のSNSでの暴走ではなく、病院という組織のルールと高い倫理観に基づいた「公式で安全な広報活動」へと転換していくことが求められます。

ブログ執筆にあたっての参考情報(一次・準一次情報)

この記事は、以下の報道および公的機関・医療機関のガイドライン等をもとに作成しています。より詳しく知りたい方は、各リンク先をご参照ください。

【事件の報道】

  • NewsDigest (RKK 熊本放送)「医療機器のスペシャリストが手術室を無断撮影しYouTube配信 減給処分 熊本総合病院」
    https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rkk/2479082
    https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2479082?display=1

【当該病院の公式ルール(SNS運用ポリシー)】

  • 熊本総合病院「ソーシャルメディアのガイドライン・運用ポリシー」
    https://www.kumasou.or.jp/sns

【臨床工学技士とは(公的情報)】

  • 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「臨床工学技士」
    https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/164
  • 厚生労働省「臨床工学技士法の施行について」
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6545&dataType=1&pageNo=1

【個人情報・手術動画の取り扱い】

  • 個人情報保護委員会(PPC)「手術動画提供事案に対する個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について」
    https://www.ppc.go.jp/news/press/20221102-2
  • PPC「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」
    https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance
  • 日本眼科医会/日本眼科学会「医療機関における個人情報、特に手術動画の取り扱いおよび患者同意について」
    https://www.nichigan.or.jp/member/news/detail.html?dispmid=917&itemid=570

【院内撮影ルールの実例】

  • JCHO東京新宿メディカルセンター「院内での撮影(写真、録画等)・録音等の原則禁止について」
    https://shinjuku.jcho.go.jp/patient/guidance/%E9%99%A2%E5%86%85%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%92%AE%E5%BD%B1%EF%BC%88%E5%86%99%E7%9C%9F%E3%80%81%E9%8C%B2%E7%94%BB%E7%AD%89%EF%BC%89%E3%83%BB%E9%8C%B2%E9%9F%B3%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%89%87%E7%A6%81/

【医療×SNSの倫理・指針】

  • 日本医師会「ソーシャルメディアに関するWMA声明」
    https://www.med.or.jp/jma/jma_infoactivity/jma_activity/2011wma/2011_02j.pdf
  • ヘルスリテラシー学会系「保健医療の専門職のためのソーシャルメディア利用のガイドライン」
    https://www.healthliteracy.jp/internet/socialmediaguideline.html

【YouTubeのプライバシー対応】

  • YouTubeヘルプ「個人情報の保護」
    https://support.google.com/youtube/answer/2801895?hl=ja
  • YouTubeヘルプ「その他の報告方法(プライバシーに関する報告 等)」
    https://support.google.com/youtube/answer/2802057?hl=ja

【医療分野の情報管理】

  • 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html
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