
何が問題なのか
患者は末梢静脈ラインから輸液を受けていますが、看護師は輸液している側と同じ上肢の肘窩から採血しようとしています。
輸液中の上肢から採血すると、採取した血液へ輸液成分が混入し、患者本来の状態とは異なる検査値になる可能性があります。
画像だけでは、輸液を一時停止しているか、ほかの採血部位を選べない事情があるかまでは分かりません。しかし、少なくとも採血前に、輸液ラインのある上肢と採血予定部位の関係を確認する必要がある場面です。
このあと何が起こり得るのか
輸液の影響を受けた検体が提出されると、検査値が実際より高く、または低く測定されるおそれがあります。
その結果、
- 異常値として緊急報告される
- 不要な再採血や追加検査が行われる
- 本来必要のない薬剤や治療が指示・実施される
- 本当の患者状態の判断が遅れる
- 検査結果への信頼性が低下し、診療が混乱する
可能性があります。
日本医療機能評価機構の医療安全情報No.126では、輸液中の四肢から採血して検査値へ影響した事例が3件報告されています。血糖値656mg/dLとしてインスリン投与が指示された事例や、ナトリウム110mEq/L・カリウム7.8mEq/Lとして治療が行われた事例が紹介されています。
なぜ起こりやすいのか
- 看護師の注意が穿刺血管や採血手技へ集中する
- 輸液刺入部が前腕や手背にあり、肘窩から離れているため同じ上肢だと意識しにくい
- 輸液チューブが寝具や機器に重なり、接続先を追いにくい
- 「採血できる血管が見つかった」ことで、採血部位の条件確認が抜ける
- 異常値が出た際、採血条件より先に患者の病態による変化と思い込みやすい
実際の報告事例でも、「採血することに集中して輸液中であることを認識していなかった」「輸液中の四肢からの採血が検査値へ影響することを知らなかった」という背景が挙げられています。
改善策
採血前
- 採血予定の両上肢を確認する
- 輸液バッグから刺入部までラインを目で追う
- 原則として、輸液の影響を受けない上肢や部位を選択する
- 採血部位の選択が難しい場合は、自己判断せず、医師・検査部門や所属施設の手順を確認する
- 採血部位を決めてから駆血帯や採血物品を準備する
検査結果が異常だった場合
- 検査値だけでなく患者の症状、バイタルサイン、既往、治療内容と整合するか確認する
- 採血した部位と輸液の有無を確認する
- 輸液の混入が疑われる場合は、治療前に再採血の必要性を検討する
- 異常値が患者の状態と合わなくても、単純に誤値と決めつけず、真の異常の可能性も含めて評価する
日本医療機能評価機構は、輸液中の四肢からの採血が検査値に影響する可能性を院内へ周知し、異常値が出た際は患者の状態を評価して治療の必要性を判断する取り組みを示しています。
まとめ
採血する腕だけを見るのではなく、輸液バッグから刺入部までラインをたどって確認します。
輸液中の上肢から採血すると、誤った検査値をもとに不要な治療が行われる可能性があります。輸液の影響を受けない部位を選び、異常値が出た場合は患者の状態と採血条件の両方を確認します。
参考資料
公益財団法人 日本医療機能評価機構
「医療安全情報 No.126 輸液中の四肢からの採血」