医療安全・KYT用語集

医療安全・KYT用語集

この用語集は、医療安全研修・KYT・事故事例の振り返りで使う言葉をまとめたものです。 特定の病院、職種、個人、患者様、ご家族を責めるためではなく、同じ事故を繰り返さないために使用します。

医療事故の多くは、ひとりの不注意だけではなく、確認方法、業務環境、教育、チーム連携、設備、情報共有、組織文化など、複数の要因が重なって起こります。 この用語集では、「人はミスをする」という前提で、事故を防ぐ仕組みを考えるための言葉を整理しています。

目的から探す

知りたいこと 見るところ
医療安全の基本を知りたい A. 医療安全の基本概念
人はなぜミスをするのか B. 人はなぜミスをするか
患者取り違え・確認ミスを防ぎたい C. 確認・患者同定・薬剤安全
手術・処置・チューブ事故を防ぎたい D. 手術・処置・チューブ・急変
転倒・誤嚥・生活場面の事故を防ぎたい E. 転倒・転落・誤嚥・生活場面
検査結果や画像所見の見落としを防ぎたい F. 検査・画像・情報共有
チームや組織の安全文化を考えたい G. チーム・組織・安全文化
事故後にどう分析するか知りたい H. 事故分析・再発防止
説明・倫理・事故後対応を知りたい I. 説明・倫理・事故後対応
情報管理・電子カルテ・システム障害を知りたい J. 情報管理・システム安全
KYT教材で使う言葉を知りたい K. KYTで使う用語

A. 医療安全の基本概念

医療安全/患者安全

ひとことで言うと:患者に起こる避けられる害を減らす取り組み。

医療安全とは、医療の中で起こり得る危険を減らし、患者への害を防ぐために、手順、環境、教育、チーム連携、組織文化を整えることです。

「気をつけましょう」で終わらせるのではなく、人がミスをしても患者に害が届きにくい仕組みを作ることが大切です。

医療安全文化

ひとことで言うと:危険を隠さず、共有し、改善につなげる文化。

医療安全文化とは、医療者が安全を最優先に考え、ヒヤリ・ハットや事故を報告しやすく、組織として学べる状態のことです。

報告した人を責める文化では、事故は隠れます。安全文化では、報告を「責める材料」ではなく「改善の材料」として扱います。

インシデント

ひとことで言うと:患者に害が出た、または害が出る可能性があった出来事。

インシデントには、実際に患者に害が出たものだけでなく、害には至らなかったヒヤリ・ハットも含まれます。

例:薬を間違えて準備したが、投与前に気づいた。

ヒヤリ・ハット

ひとことで言うと:事故にはならなかったが、危なかった出来事。

「ヒヤッとした」「ハッとした」出来事です。重大事故の前には、同じような小さな危険が何度も起きていることがあります。

ヒヤリ・ハットは、責めるものではなく、重大事故を防ぐための早期警報です。

ニアミス

ひとことで言うと:事故になりかけたが、偶然または確認で止まった出来事。

「止まってよかった」で終わらせず、なぜ間違えたか、次も止められる仕組みがあるかを考えます。

医療事故

ひとことで言うと:医療に関連して患者に害が生じた出来事。

ただし、「医療事故」という言葉は、患者安全上の意味、法律上の意味、報道上の意味、医療事故調査制度上の意味で異なることがあります。

記事にするときは、「このページでは医療事故をこういう意味で使います」と補足すると誤解を減らせます。

有害事象

ひとことで言うと:医療に関連して患者に好ましくない結果が生じた出来事。

有害事象は、必ずしもミスや過失を意味しません。適切な医療をしていても起こる合併症や副作用が含まれることもあります。

「有害事象=医療ミス」と決めつけないことが重要です。

ひとことで言うと:患者に生じた身体的・精神的な悪影響。

害には、けが、病状悪化、苦痛、障害、死亡などが含まれます。

合併症

ひとことで言うと:病気や医療行為に続いて起こる別の症状や問題。

合併症は、必ずしもミスではありません。しかし、予測できる合併症については、説明、観察、早期発見、対応が必要です。

医療過誤

ひとことで言うと:医療者が求められる注意義務を怠り、患者に害を与えたとされる行為。

医療事故と医療過誤は同じではありません。法的判断がない段階で「過誤」と断定しない方が安全です。

アクシデント

ひとことで言うと:意味があいまいなため、使用に注意が必要な言葉。

医療安全の分野では、「アクシデント」という言葉は定義が揺れやすいです。害が出たインシデントを表したい場合は、「有害なインシデント」「患者に害が生じた事例」など、意味が明確な表現を使う方がよいです。

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B. 人はなぜミスをするか

エラー

ひとことで言うと:意図した行動がうまく実行できない、または計画そのものが間違っていること。

エラーは、人間らしさの一部です。医療安全では、エラーをした人を責めるだけでなく、なぜエラーが起こりやすい状況だったのかを考えます。

ヒューマンエラー

ひとことで言うと:人が起こす間違い。

ヒューマンエラーは、注意不足だけで起きるわけではありません。疲労、繁忙、似た名前、似た薬剤、見にくい表示、複雑な手順、声を出しにくい雰囲気などが重なると、誰でもミスをしやすくなります。

ヒューマンファクター

ひとことで言うと:人がミスしやすい条件を考える視点。

ヒューマンファクターは、「人が悪い」と考えるのではなく、人の限界を前提に、作業、環境、機器、チーム、組織を設計する考え方です。

例:似た薬剤を隣に置かない。同じ名字の患者を同室にしない。バーコード照合を使う。

認知バイアス

ひとことで言うと:思い込みや経験によって判断が偏ること。

例:「いつもの腹痛だろう」「この患者はいつも不穏だから」「若いから重症ではないだろう」など。

後知恵バイアス

ひとことで言うと:結果を知った後に、“当時も分かるはずだった”と思ってしまう偏り。

事故後に振り返ると原因は明らかに見えることがあります。しかし、当時の現場では情報が不足していたり、別の判断が合理的に見えたりします。

思い込み

ひとことで言うと:確認せずに“そうだ”と決めてしまうこと。

例:「この薬はいつもの薬だろう」「この患者さんはAさんだろう」「前の勤務者が確認しているだろう」。

スリップ

ひとことで言うと:やろうとしたことは正しいが、動作を間違えること。

例:隣の薬剤を取る。電子カルテで隣の患者を開く。別のボタンを押す。

ラプス

ひとことで言うと:記憶抜け、うっかり忘れ。

例:検査結果を後で確認しようとして忘れる。申し送り事項を伝え忘れる。

ミステイク

ひとことで言うと:判断や計画そのものが間違っていること。

例:禁忌薬だと知らずに処方する。必要な検査を不要と判断する。手技の適応を誤る。

疲労

ひとことで言うと:判断力、注意力、反応速度を低下させる状態。

長時間勤務、夜勤、休憩不足、人員不足は、医療安全上のリスクです。

多重課題

ひとことで言うと:複数の仕事を同時に抱える状態。

配薬中に電話が鳴る、点滴準備中にナースコールが鳴る、申し送り中に別件を頼まれるなどの状況では、確認漏れや記録漏れが起きやすくなります。

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C. 確認・患者同定・薬剤安全

確認

ひとことで言うと:これから行う行為が正しいか確かめること。

確認は、医療安全の基本です。ただし、「見たつもり」「確認したつもり」では不十分です。

患者同定

ひとことで言うと:その医療行為を受ける患者が本当に本人か確認すること。

患者同定では、氏名、生年月日、患者ID、リストバンド、バーコードなど複数の識別子を使います。「○○さんですね?」だけでは不十分です。

患者誤認

ひとことで言うと:患者を取り違えること。

患者誤認は、手術、検査、投薬、輸血、処置、食事、書類、電子カルテなど、あらゆる場面で起こります。

5R/6R

ひとことで言うと:与薬時に確認すべき基本項目。

5Rは、正しい患者、正しい薬、正しい量、正しい方法、正しい時間です。6Rでは、正しい目的を加えることがあります。

ダブルチェック

ひとことで言うと:2人または2回で確認すること。

ダブルチェックは有効ですが、やり方が悪いと「2人で同じ間違いを見逃す」ことがあります。互いに影響されずに確認する独立ダブルチェックが重要です。

独立ダブルチェック

ひとことで言うと:2人が別々に確認してから結果を照合する方法。

片方が読み上げ、もう片方がうなずくだけでは不十分です。それぞれが処方、薬剤、患者、量、経路を独立して確認します。

バーコード照合

ひとことで言うと:患者や薬剤のバーコードを読み取り、機械的に照合する仕組み。

人の記憶や目視だけに頼らない防壁です。ただし、バーコード照合があっても、運用を省略すると意味がありません。

ハイアラート薬

ひとことで言うと:間違えると重大な害につながりやすい薬。

例:インスリン、抗凝固薬、抗がん剤、麻薬、鎮静薬、高濃度電解質、筋弛緩薬など。

禁忌

ひとことで言うと:使ってはいけない、または原則避けるべき条件。

禁忌確認は、個人の記憶に頼らず、添付文書、電子カルテ警告、薬剤師確認などで支える必要があります。

口頭指示

ひとことで言うと:口で伝えられる医師等の指示。

口頭指示は、聞き間違い、単位違い、記憶違いが起こりやすい場面です。復唱、記録、単位の明確化、事後確認が必要です。

投与経路間違い

ひとことで言うと:薬を本来とは違う経路で投与すること。

例:内服薬を注射ルートへ、経管栄養を静脈ラインへ、局所麻酔薬を点滴へ。経路違いは重大事故につながりやすいです。

輸血照合

ひとことで言うと:輸血前に患者と血液製剤が一致しているか確認すること。

患者、血液型、製剤番号、有効期限、交差適合試験、投与速度などを確認します。輸血ミスは致命的になり得るため、2人確認やバーコード照合が重要です。

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D. 手術・処置・チューブ・急変

タイムアウト

ひとことで言うと:手術や処置の開始前に、チーム全員で重要事項を確認すること。

患者、部位、左右、術式、麻酔、アレルギー、必要物品、予想されるリスクを確認します。形だけのタイムアウトでは意味がありません。

左右取り違え/部位取り違え

ひとことで言うと:右左や手術部位を間違えて処置や手術をすること。

マーキング、同意書、画像、手術室での確認が不十分なときに起こります。

手術部位マーキング

ひとことで言うと:手術する部位を事前に印で示すこと。

左右差のある手術、複数部位の処置では重要です。マーキングは、同意書、画像、診療録と一致している必要があります。

器具遺残

ひとことで言うと:手術後にガーゼや器具などが体内に残ること。

カウント、不一致時の探索、X線確認、手順化、中断権限が重要です。カウント不一致を「たぶん大丈夫」で済ませないことが必要です。

カテーテル関連事故

ひとことで言うと:カテーテルの挿入、管理、抜去に関する事故。

ガイドワイヤー遺残、誤挿入、感染、抜去忘れ、抜去時の出血、接続間違いなどがあります。

チューブトラブル

ひとことで言うと:チューブの抜去、閉塞、誤接続、位置ずれなど。

気管カニューレ、胃管、尿道カテーテル、ドレーン、点滴ラインなどで起こります。移乗、体位変換、入浴、検査搬送時に特に注意が必要です。

気管カニューレ事故

ひとことで言うと:気管カニューレの抜け、閉塞、誤挿入などによる事故。

短時間で低酸素に至るため重大化しやすいです。呼吸状態、SpO2、カニューレ位置、固定、痰の量、吸引の必要性、緊急時物品を確認します。

食道挿管

ひとことで言うと:気管に入れるべきチューブが食道に入ってしまうこと。

換気不良、低酸素、心停止につながります。胸郭挙上だけで判断せず、呼気CO2、聴診、SpO2、波形など複数の方法で確認します。

急変対応

ひとことで言うと:患者の状態が急に悪くなったときの対応。

早期発見、応援要請、役割分担、記録、家族対応が重要です。「少し様子を見る」が遅れにつながることがあります。

早期警戒スコア

ひとことで言うと:バイタルサインなどから急変リスクを点数化する方法。

呼吸数、SpO2、血圧、脈拍、意識レベル、体温などを使い、急変の前兆を見つけます。

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E. 転倒・転落・誤嚥・生活場面

転倒

ひとことで言うと:患者が立位・歩行中などに倒れること。

高齢、認知症、ふらつき、睡眠薬、トイレ歩行、点滴・チューブ、履物、夜間、環境変化などがリスクになります。「転ばないように言った」だけでは不十分です。

転落

ひとことで言うと:ベッド、車椅子、検査台などから落ちること。

ベッド柵、離床センサー、ナースコール、見守り、環境整備が関係します。ベッド柵は安全対策になる一方で、乗り越えようとして重症化する場合もあります。

離設

ひとことで言うと:患者や利用者が施設・病棟から無断で出てしまうこと。

認知症、せん妄、不穏、帰宅願望がある場合に起こりやすいです。出入口管理、見守り、早期捜索手順が必要です。

誤嚥

ひとことで言うと:食べ物や唾液などが気管に入ること。

嚥下機能低下、認知症、体位不良、早食い、食形態不一致、眠気、介助不足などがリスクになります。

窒息

ひとことで言うと:食物や異物などで気道がふさがること。

短時間で命に関わります。餅、団子、パン、肉、こんにゃく、嚥下機能に合わない食事などは注意が必要です。

食事介助

ひとことで言うと:食事を安全に摂取できるよう支援すること。

食べさせることだけでなく、誤嚥・窒息を防ぐことが重要です。覚醒状態、姿勢、食形態、一口量、ペース、むせ、残渣、食後の状態を確認します。

入浴事故

ひとことで言うと:入浴中の溺水、転倒、急変、チューブ事故など。

入浴は、裸になる、移動する、湯気で見えにくい、チューブが外れやすいなど、リスクが多い場面です。

送迎事故

ひとことで言うと:送迎中の置き去り、乗降時転倒、確認漏れなど。

特に、車内置き去りは命に関わります。乗車名簿、降車チェック、車内最終確認、ダブルチェック、最後列確認が必要です。

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F. 検査・画像・情報共有

検査結果見落とし

ひとことで言うと:検査結果を確認しない、または重要所見を見逃すこと。

血液検査、病理検査、画像検査などで起こります。結果を「見る」だけでなく、確認したこと、対応したこと、患者に説明したことまで記録する必要があります。

画像診断報告書見落とし

ひとことで言うと:報告書に書かれた重要所見が主治医に届かない、または読まれないこと。

がんの発見遅れなどにつながる重大なテーマです。未読管理、重要所見アラート、既読確認、対応確認、診療科横断の仕組みが必要です。

パニック値

ひとことで言うと:すぐに対応が必要な危険な検査値。

パニック値は、報告されるだけでは不十分です。誰が受け、誰に伝え、どう対応したかまで確認する必要があります。

申し送り/引き継ぎ

ひとことで言うと:患者情報や注意点を次の担当者へ引き継ぐこと。

重要情報が抜けたり、曖昧に伝わったりすることがあります。SBARなどの型を使うと、伝達漏れを減らせます。

SBAR

ひとことで言うと:状況を簡潔に伝えるための型。

S:Situation 状況、B:Background 背景、A:Assessment 評価、R:Recommendation 提案・依頼。急変報告、医師への連絡、申し送りに有効です。

クローズドループコミュニケーション

ひとことで言うと:指示を受けた人が復唱し、指示者が確認する伝達方法。

聞き間違いを防ぐために重要です。特に急変時や口頭指示で有効です。

情報共有不全

ひとことで言うと:必要な情報が必要な人に届かないこと。

情報そのものが存在していても、共有されていなければ防壁になりません。検査結果、申し送り、電子カルテ上の重要情報などが埋もれることがあります。

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G. チーム・組織・安全文化

チーム医療

ひとことで言うと:複数職種が協力して患者を支える医療。

医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、検査技師、放射線技師、リハ職、事務職などが、それぞれの専門性で安全を支えます。

権威勾配

ひとことで言うと:立場の違いによって意見を言いにくくなる関係。

権威勾配が強すぎると、危険に気づいても止められません。若手や他職種が「おかしい」と言える仕組みが必要です。

心理的安全性

ひとことで言うと:疑問や危険を安心して発言できる状態。

心理的安全性は、仲良しという意味ではありません。患者を守るために、立場に関係なく「おかしい」と言えることです。

Stop the line/中断権限

ひとことで言うと:危険を感じたら作業を止める権限。

手術、処置、投薬、輸血などで、誰かが危険に気づいたら中断できる仕組みです。「止めた人を責めない」ことが重要です。

エスカレーション

ひとことで言うと:自分だけで対応できない危険を、上位者や別チームへ早く上げること。

急変、異常値、判断困難、患者・家族トラブルなどでは、早めのエスカレーションが必要です。

リーダーシップ

ひとことで言うと:チームが安全に動けるよう方向づける力。

命令することだけではありません。危険を共有し、役割を明確にし、発言しやすい場を作ることです。

ノンテクニカルスキル

ひとことで言うと:専門技術以外の安全に必要な力。

コミュニケーション、状況認識、意思決定、チームワーク、リーダーシップ、タスク管理などです。

テクニカルスキル

ひとことで言うと:専門的な知識や技術。

手術手技、注射、挿管、薬剤調製、検査操作などです。医療安全では、テクニカルスキルとノンテクニカルスキルの両方が必要です。

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H. 事故分析・再発防止

RCA/根本原因分析

ひとことで言うと:事故の背景要因を掘り下げる分析方法。

「なぜ?」を繰り返し、直接のミスだけでなく、手順、環境、教育、組織、情報共有などの要因を探ります。

なぜなぜ分析

ひとことで言うと:“なぜ起きたか”を繰り返して原因を深掘りする方法。

個人非難で止めないことが重要です。「確認しなかった」ではなく、なぜ確認できなかったのか、なぜ確認手順が省略されたのかまで掘ります。

FMEA

ひとことで言うと:事故が起こる前に、失敗しそうな箇所を予測して対策する方法。

RCAが事故後の分析なら、FMEAは事故前の予防です。新しい機器や手順を導入する前に有効です。

スイスチーズモデル

ひとことで言うと:複数の防壁の穴が重なったとき事故が起こるという考え方。

1つのミスだけで事故になるとは限りません。確認、教育、機器、手順、監査などの防壁がいくつも破れたとき、患者に害が届きます。

防壁

ひとことで言うと:事故が患者に届く前に止める仕組み。

例:バーコード照合、ダブルチェック、アラート、物理的分離、標準手順、薬剤師確認、タイムアウト、監査。

直接要因

ひとことで言うと:事故の直前に起きた具体的な破綻。

薬剤を取り違えた、患者を確認しなかった、チューブを誤接続した、検査結果を見落とした、などです。

背景要因

ひとことで言うと:直接要因を生んだ背後の条件。

忙しすぎる、手順が複雑、教育不足、人員不足、似た薬剤名、物品配置が悪い、相談しにくい雰囲気などです。

再発防止策

ひとことで言うと:同じ事故を繰り返さないための具体的な対策。

弱い対策は「注意する」「周知する」。強い対策は、物理的に分ける、接続できない構造にする、電子カルテで警告を出す、独立ダブルチェックにする、定期監査する、などです。

PDSA/PDCA

ひとことで言うと:改善を回すためのサイクル。

Plan:計画、Do:実行、Study/Check:評価、Act:改善。対策を作って終わりではなく、実際に機能しているかを確認します。

監査

ひとことで言うと:決めたルールや対策が実際に守られているか確認すること。

輸血照合の実施率、タイムアウト記録、画像診断報告書の未読件数、転倒リスク評価の実施率などを確認します。

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I. 説明・倫理・事故後対応

共同意思決定

ひとことで言うと:医療者と患者が一緒に治療方針を決めること。

医学的に正しいだけでなく、患者の価値観、生活、希望を踏まえて決めます。

ACP

ひとことで言うと:将来の医療やケアについて、本人・家族・医療者が話し合うこと。

終末期医療、救急搬送、人工呼吸、蘇生、療養場所などについて、本人の意思を尊重するために行います。

DNAR

ひとことで言うと:心停止時に心肺蘇生を行わないという医療上の方針。

DNARは「何もしない」という意味ではありません。苦痛緩和、看護、治療、ケアは継続されます。

オープンディスクロージャー

ひとことで言うと:事故や予期しない悪い結果について、患者・家族に誠実に説明すること。

事実、分かっていること、分かっていないこと、患者への対応、今後の調査、再発防止、謝罪や遺憾の表明を含みます。

説明責任

ひとことで言うと:なぜその判断や対応をしたのか説明できる責任。

医療安全では、説明責任は個人だけでなく組織にもあります。

第二の被害者

ひとことで言うと:事故に関わった医療者が精神的苦痛を受けること。

医療事故では、患者・家族が第一の被害者です。同時に、関わった医療者も強い自責感、恐怖、離職、燃え尽きに苦しむことがあります。

Just Culture/公正文化

ひとことで言うと:学習と責任を両立する文化。

すべてを個人のせいにしない。しかし、危険な逸脱や故意の行為を見逃すわけでもない。人間のエラー、危険な近道、故意の違反を分けて考えます。

医療事故調査制度

ひとことで言うと:予期しなかった死亡・死産について、原因を調査し再発防止につなげる制度。

目的は、個人責任追及ではなく、原因究明と再発防止です。

院内調査

ひとことで言うと:医療機関内で事故の経過や要因を調べること。

事実経過、関係者の聞き取り、診療録、モニター記録、手順、体制などを確認します。

第三者委員会

ひとことで言うと:外部の専門家を含めて事故を検証する委員会。

重大事故や組織的課題がある場合、第三者性のある検証が信頼回復につながります。

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J. 情報管理・システム安全

個人情報

ひとことで言うと:患者を識別できる情報。

氏名、住所、生年月日、病名、検査結果、画像、診療録、メモなどが含まれます。持ち出し、誤送信、紛失、公開ミスは、患者の尊厳と信頼を傷つけます。

電子カルテ不適切閲覧

ひとことで言うと:診療上必要のない患者情報を見ること。

有名人、事件関係者、知人などのカルテを興味本位で見ることは重大な問題です。アクセスログ管理と職員教育が必要です。

ランサムウェア

ひとことで言うと:データを暗号化し、復旧のために金銭を要求する攻撃。

電子カルテが使えなくなると、診療そのものが止まる可能性があります。バックアップ、復旧訓練、ネットワーク分離、代替運用手順が必要です。

業務継続計画/BCP

ひとことで言うと:災害やシステム障害時にも医療を続けるための計画。

電子カルテ停止、停電、感染症流行、災害などに備えます。

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K. KYTで使う用語

KYT

ひとことで言うと:危険予知トレーニング。

現場のイラストや事例を見て、どこに危険があるか、何が起こりそうか、どう防ぐかを考える訓練です。

危険因子

ひとことで言うと:事故につながる可能性のある要素。

似た名前、暗い環境、忙しい時間帯、未固定のチューブ、不明瞭な指示、薬剤の置き間違いなどです。

不安全状態

ひとことで言うと:事故が起こりやすい環境や状況。

床が濡れている、薬剤が混在している、ベッド柵が不適切、アラームが多すぎる、必要物品がない、などです。

不安全行動

ひとことで言うと:事故につながる可能性のある行動。

確認を省略する、口頭指示を復唱しない、薬を一時的に別患者のテーブルに置く、チューブ固定を確認せず移乗する、などです。

危険予知

ひとことで言うと:事故が起きる前に危険を見つけること。

KYTでは、事故後の結果ではなく、事故前の場面から危険を探します。

早期兆候

ひとことで言うと:重大事故の前に見られる小さな異常。

薬の色が違う、アラームが頻回、SpO2が下がり始めた、報告書に重要所見がある、患者が「いつもと違う」などです。

指差し呼称

ひとことで言うと:対象を指差し、声に出して確認する方法。

目、手、声を使うことで、確認漏れを減らします。

1患者1トレイ

ひとことで言うと:複数患者の薬剤や物品を混ぜないための方法。

与薬、処置、点滴準備で有効です。複数患者分を同時に扱うと、取り違えリスクが上がります。

物理的分離

ひとことで言うと:間違えやすい物を物理的に離すこと。

高濃度薬剤を別棚に置く、消毒薬と注射薬を同じ場所に置かない、経口用と注射用シリンジを分ける、などです。

フールプルーフ

ひとことで言うと:間違った操作ができないようにする設計。

接続できないコネクタ、専用シリンジ、バーコード照合、入力上限など。人の注意に頼るより強い対策です。

フェイルセーフ

ひとことで言うと:失敗しても安全側に働く設計。

異常時に機械が停止する、アラームが鳴る、危険な設定が保存できない、などです。

アラーム疲れ

ひとことで言うと:アラームが多すぎて重要な警報に反応しにくくなること。

アラームは多ければ安全とは限りません。不要なアラームを減らし、本当に重要な警報に気づける設計が必要です。

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サイト掲載時の注意書き

この用語集は、医療安全・KYT・事故予防の学習を目的としたものです。 特定の病院、職種、個人、患者様、ご家族を非難するためのものではありません。

医療事故の背景には、確認方法、業務環境、教育、設備、チーム連携、組織文化など複数の要因が関係します。 本サイトでは、個人責任の追及ではなく、同じ事故を繰り返さないための仕組みづくりを重視します。

用語の定義は、医療安全分野で一般的に用いられる考え方をもとにしていますが、法律上・制度上の定義とは異なる場合があります。 記事内で「医療事故」「有害事象」「合併症」などの語を使う場合は、文脈に応じて意味を補足します。