
何が問題なのか
患者をベッドからストレッチャーへ移乗しようとしていますが、膀胱留置カテーテルの尿バッグが元のベッドの足元に掛かったままです。
患者と尿バッグはチューブでつながっています。このまま患者だけをストレッチャー側へ動かすと、チューブが引っ張られる位置関係です。
また、看護師2人の注意は患者の身体と移乗用シートに向いており、画像上では、尿バッグを持ち替える人やカテーテルの走行を管理する人が明確ではありません。ただし、実際に確認していないかどうかは画像だけでは断定できないため、移乗開始前に確認すべきポイントとして捉えます。
このあと何が起こり得るのか
このまま患者をストレッチャーへ移すと、膀胱留置カテーテルが強く牽引され、次の事故につながるおそれがあります。
- カテーテルの抜去・抜けかけ
- 尿道粘膜の損傷や出血
- 疼痛
- カテーテルの再挿入や泌尿器科への対応が必要になる
- チューブの屈曲・閉塞による尿流の停滞
- 尿バッグの落下や接続部の外れ
日本医療機能評価機構が分析した移動時のドレーン・チューブ類の偶発的抜去事例では、膀胱留置カテーテルが抜けた8件すべてで、尿道損傷と出血が報告されています。
なぜ起こりやすいのか
患者移乗では、患者の体位、移乗用シート、ベッドとストレッチャーの高さ、スタッフ同士のタイミングなど、複数の確認が同時に必要です。そのため、患者の身体に接続されたチューブ類の固定先まで確認が及ばないことがあります。
特に今回の場面では、
- 尿バッグが患者から離れたベッド足元にある
- 尿バッグが視線の低い位置にあり、見落としやすい
- 看護師がそれぞれ患者の身体を支えることに集中している
- 「チューブが患者につながっていること」は見ても、「バッグがどこに固定されているか」を見落としやすい
- 移乗開始後は患者の身体を支える必要があり、途中で止めにくい
といった背景が考えられます。
これは単に「尿バッグを見忘れた」という問題ではなく、移乗前に患者へ接続されているすべてのラインと、その固定先を確認する工程が必要な場面です。
改善策
移乗開始前
- 患者に接続されているチューブ、ドレーン、カテーテルを声に出して確認する
- チューブの挿入部からバッグ・機器まで、全長を目で追う
- 尿バッグを元のベッドから外し、患者と一緒に移動できる状態にする
- チューブに牽引、屈曲、身体の下への巻き込みがないか確認する
- 誰が患者を支え、誰がライン類を管理するか役割を決める
- 「ライン確認完了」などの合図をしてから移乗を開始する
移乗中
- ライン管理担当者は、チューブの余裕と尿バッグの位置を確認し続ける
- 抵抗や牽引を感じた場合は、無理に患者を動かさず、いったん停止する
- 移乗用シートや患者の身体の下にチューブを巻き込まない
移乗後
- 尿バッグを膀胱より低い位置に掛ける
- 床へ直接接触させない
- チューブの屈曲、閉塞、牽引がないことを再確認する
- 尿の流出、尿量、血尿、疼痛の有無を確認する
採尿バッグは膀胱より低い位置に保ち、床へ直接接触させないことも、尿路留置カテーテル管理の基本です。
まとめ
患者を動かす前に、患者本人だけでなく、患者につながっているすべてのチューブと固定先を確認します。
今回の場面では、尿バッグが元のベッドに残ったままです。移乗前にバッグを外してライン管理の担当者を決め、牽引や巻き込みがないことを確認してから移乗を開始します。
参考資料
- 日本医療機能評価機構「移動時のドレーン・チューブ類の偶発的な抜去」
- 厚生労働省関係資料「尿路留置カテーテル感染対策」